「風を切って」



 鉛のような 足と腕が

 隣の足音に 精一杯のビートを合わせて

 最後の力を 振り絞るタイミングを図っている


 肺に突き刺さる冷気を 鼓動に代え

 残された道と 己の意地とが天秤にかかる

 最後の1キロ


 いつもの道を トラックを

 坂道を 川辺を 芝生を 砂利道を

 駆け抜けた距離だけを 信じて


 積み重ねた苦しみの数が

 託された襷の重さを凌駕する ほんの一瞬

 風を切り裂いた白い息が

 今

 新たな風を引き連れて 駆け抜けてゆく