「夏」





 夏は どこか 水に似ている

 つかめないけれど どこかに涯があるのが漠然と 感じられる

 僕らはその涯を 必ず一回は

 どこかで追い求めたりするのだけれど

 走り抜けた先は 涯ではなく

     気がつけば いつも 秋の始まりに 立っている


 それはまるで

 走っても 走っても

       追いつかない 夏の 幻

 まるで白昼夢だったあの日に 消えたのは

 あなたを乗せて走り去った クリーム色のバスだった


 あれは今 どこを走っているのか

 濃い青の透き通るような丘

 風が吹くと 風鈴がまるで反響するように鳴る小路地

 町を通る 小さな川

 夕焼けの 懐かしい匂いのする町を

 僕はずうっと 歩き回っている

 探しても 探しても あの夏が

       もう見つからないのは 分かっているのに





 最後の夏の風が 駆け抜けて 僕はようやく気付く


 嗚呼 僕は 今まで 夏の涯を泳いでいたのだ と