「たとえば、無知とは」





 かつて 誰もが立ち尽くした夏があったという

 美化してはならず 風化させてもならない

 そんな夏の中に そんな暑い夏の中に生きた人々は

 果たして どれだけの思いを抱えていたのだろう



 ―――無念だ、と

 それだけを遺して 土に還っていった人に

 何も知ろうとしない 僕たちは

 その両手を以って のうのうと

 祈ることしか知らないでいる



 そうしているうちに 僕らはまた

 この空の下に来てしまった

 八月の

 突き抜けるような 青空の下に