「八月の愚者」



 天を貫く暑さの果てに
 彼は何かをもとめてヤマナイ
  デキれば助けてホシい
 何かを求める前に殺サれそうダ
  助けて助けて助けて
   殺サレル前に叫ブ言葉は一つ
  助けて助けて助けて
   今理性を捨て去ることはタヤスイ

 ナイフ片手に街を歩イテも
 彼を止める奴ナンカ誰もいやしない
  デキレバなんとか止めてほしい
 『オレガヒトデナクナルマエニ』
  助けてたすけてタスケテ
   セミの声のように鳴り響く
  タスケテたすけて助けて
   歌う声は今日も街の中を佇む


 助けて たすけて タスケテ 助けて たすけて タスケテ
 助けて タスケテ たすけて たすけて 助けて タスケテ


 歌う声は木精スル

 夏の蒼さに押し潰された少年は
 ナイフを片手に街を堕ちていく


 『ハチガツノグシャハトメドナクトオイ』

 蝉の声が聞コえタ
 ヒグラシの声が耳ヲ裂いた