「あかがねのまち」




 また ここに

 こんな所に戻ってきてしまったと

 見慣れた入り口の扉を 溜息混じりに見上げる


 拠り所は 心の中に思い浮かべるくらいで丁度いい

 実際にあると そこから離れられなくなると

 そんな話を 昔 誰かに聞いたけど


 それでも どこかに触れる形で

 あって欲しいと願う 拠り所は

 心の中にあるほうが 怖いときもある


 潜り抜ける入り口の その暗さに

 いつぞやの 記憶の向こう側で

 誰かがふと 優しく笑うのを思い出す


 今はもう 誰も救えない

 ひんまがった屋上の手すり

 寂れた公園の 錆び付いたブランコ

 枯れ落ち葉の積み重なる 秋の街路


 静かに

 吸い寄せられるように

 私は暗がりへ かつて失った拠り所へと

 手を伸ばす