「あらぞめやわ」



 薄く 薄く

 どこまでも 繊細で軽い ガラスのようで

 力を入れて砕いたら

 きっと 落ち葉ほどの音もしない

 三日月の 頼りない灯りの下で


 君が寝床で軽く吐き出した世間への毒は

  明るい所で見たら どんな色をしているのだろう

 今と同じ 煤のような黒さなのか

 それともあの日 見た

  コールタールのような血の塊を

  搾り出された胃液で溶かして薄めたような

  強烈に悲しい色なのか


 誰にも気づくことは無い

 病床の夜は とても静か

 力を入れて砕いたら

 きっと 枯れ葉ほどの音もしない

 赤子のように 差し伸ばされた手


 痩せ落ちた 頬に手を寄せる

 三日月の 頼りない灯りの下