「おもいめぐらし」






 思い巡らし またひとひら

 鈍色の空より落つ 白い冬を見て


 大事にしまったまま 使わなかった「好きです」

 平手打ちより 先に出すはずだった「ごめんね」

 心の片隅に 残ったままの「ありがとう」

 言えずに終わった 「さよなら」も


 何度も取り出しては 捨てるのをためらい

 また しまっては その重さを嘆いて


 あの日 言うのをためらった一言

 言わなければならなかった一言

 言ってはならなかった 言葉たち

 繰り返し 繰り返し



 思い巡らし またひととせ

 鈍色の空より響く 鐘の音を聞き