「望郷の屍」





 きしきし きしきし

 霜の音が聴こえる


 春は朽ち 夏は果て 秋は死に

 それらの残骸をすべて 覆い隠すように

 冬が 降りてくる


 凍てついた風の冷たさに

 切り裂かれてゆく 素足を

 暖めることも できずに


 秋風が抉った胸の隙間へと

 注ぎ込まれる 寂しさを

 どうして 拭うことができようか



 時を止めた景色の中 ただ季節は逝く

 始まりを告げる 絶望の中を

 ただ しんしんと

 染みゆくように また

 冬が 降りてくる