「たった一つの」


 私たちにはもう 何も起こらない

 小さな世界の たった一つのルール

 知り合い 友達 親友 恋人

 どれとも違う もっと確かなカタチ



 その場限りの 嘘みたいなものを

 よりどころにして

 全て 一つも漏らさず 抱えてゆこうと

 無理なことを言いあって 笑うの



 私たちにはもう 何もなくなった

 小さな世界の たった一つの事実

 足掻くことも 諦めることも忘れて

 ただじっと 暗闇の中で



 お腹が空いたね 喉が渇いたね

 ささやく度に 小さな世界が揺れる

 外は怖いよ 本で読んだ鬼が居る

 名前はね お母さんって言うんだよ



 私たちにはもう 何も届かない

 小さな世界の たった一つの希望

 あざだらけの頬を 撫であって

 いたいのいたいのとんでいけ



 窪んだ祈りが 月夜に落ちて

 黒いが波を打ち 星が揺れる

 どこからか 光が目を焼いて

 私たちの体は 軽くなる




 私たちはもう 何にもいらない

 互いの暖かさだけ 消えないように

 小さな世界に たった一つの



 私たち