「夜氷」
 私を抱いて
 抱きしめて
 壊れるくらいに
 抱きしめていて

 欠けた月は
 まるで鋭い爪のよう
 いつまでも
 夜の中を追いかけてくる

 深い森は
 往くべき路を塞いで
 どこまでも
 夜の中を追い詰めてくる

 手を離さないで
 握っていて
 このまま私が
 冷たくなるまで

 夜明けは来ない
  永久に来ない
 いつまでも
夜の中を彷徨って

 澱んだ水は 低く蠢いて
濁った風は 闇を誘う

 夜明けは 来ない
永久に来ない
 だから最期まで
抱きしめていて