「遠春」







 冬がもう あんなに遠くに見える

 過ぎ去った季節を見送って

 今 薄暗い 朝靄の中を


 かじかんだままの指先が

 最後に あなたの頬に触れたのは いつ

 ごまかすように 握って隠して

 弱い心


 春の風に押されながら

 見慣れた町並みに

 色褪せたフィルターをかけて

 遠く 通り抜けた季節を振り返る


 溶けた心を 凍らせる術は既になく

 私は 今年もあなたを 忘れられずに

 駆け抜けた季節の向こう側で

 あと何度 苦しみを抱くのか


 あなたの眠る 桜の季節

 吹雪の合間に 涙をひとすじ