「ちからを、せめてちからを」



 いたみなら もうたくさんなんです
 あのひとは
わたしのいくつものわがままなおねがいにこたえてくれました

 とても優しくて
 とても暖かい
 私をそっと包んでくれる
 そんな人だったのに

 くるしみを すべてわたしにください
 わたしは
なんであのひとのひとつのおねがいにさえたえてあげられないの

 力を
 あの人の手を もう一度握り返すほど強い力を

 なぜわたしは
 あのひとをのこして
 いってしまわなければならないの

 力を
 せめて ちからを
 握り返す手と 最後の笑顔に全てを載せて

 ありがとうと、さよならを