「たそがれどきの烏瓜」





 ひびわれて くだけて

 めちゃくちゃになって

 もう二度と呼ぶことのできなくなった

 誰かの夢の 手を引いて

 夕暮れの道を行く


 何か 伝えておいた方が良いことはないか

 遠くから聞こえる 千四百二十ヘルツ

 一千万分の一と 八千百九十二を捨てて

 九割五分を嘯く 空虚の螺旋階段を昇る


 横倒しになった バベルの塔を 渡り

 可視光を越えた 波の粒へと至る頃

 やがて西の空にも 染み渡る

 ゆらぐ河のほとりで

 小さな光を解き放つ



 誰にも理解されなかった

 私の夢は いま

 この永遠のどのあたりを 漂っているのか



 脳裏を掠める面影を 愁う間もなく

 粉々に砕かれた夢が 新しい夜に放物線を描き

 私は その方角へと一つ 烏瓜を灯し

 長い下り坂を 降りてゆく