「しゅいろのひととき」



 やわらかい季節の街角で

 目には見えない風の唄を聞く

 白くかすんだ曇り空は

 お天道様が無関心を決め込んだしるし


 ストレートの紅茶をすすっている間にも

 刃は振り下ろされ

 銃弾は宙を舞い

 バッグは盗まれて

 白い粉は街を行き交う

 隣人同士は汚く罵り合い

 町行く人々は悲鳴を無視し

 忘れ去られた野球のボールは

  いつか宇宙で光速になる日を夢見ている


 誰もが

 小説の向こう側に思いを馳せても

 新聞の向こう側になんて 興味を抱かないのと同じで


 席を立って 飲み残しの紅茶を見つめる


 君はもう この物語には

 興味はないのだろうかと