「その名前を知らずに」







 その名前を 僕は知らない

 かつて生まれ

 栄え

 歴史の小欄に名を刻んだ


 幾多の希望を抱え

 不安を孕んで膨らみ

 幾多の絶望を生み

 また さらなる可能性を示しながら


 そして いつしか滅んだ 出来事や物たち


 そうして 僕の知らないものは 

 僕の前を素通りしながら 何食わぬ顔で増えてゆく

 いまもそう

 僕は 知らないことを知らないまま

 覚えたものを 片っ端から忘れてゆく



 形あるものは 土となり

 形なきものは 空へ浮く

 歴史は「今」を少しずつ分解しながら

 この時代をすべて 食らい尽くし

 再び その名が歴史に訪れる日を 待っている